お釈迦様について

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豊かな生活を捨てて出家したわけ
 たった1人の王子として生まれたシッダールタは、物質的・経済的に豊かな毎日を送っていたことでしょうし、将来その国を統治する王として国民が期待していたことと思われます。
 一説によると、もともと思慮深かったシッダールタは、何とかして出家して人生に対する疑問を解決しようと考えていましたが、継承者としての責任感から我慢をしていました。ところが、ラーフラと名づけられた男の子が誕生したので、父の国の後継者ができたと安心して出家した、といわれていますが、常識的に考えると、我が子の誕生は、かえって出家のためには障害になるともいえます。
 四門出遊(しもんしゆつゆう)とよばれるエピソードが、シッダールタに、この世の老・病・死を気づかせ、これこそが出家の直接の原因となった、ともいわれますが、これは後になっての理由付けのようです。
 それよりも、生まれてわずか7日目に生母であるマーヤーを失ったことが、後になって大きな影響を与えることになったのではないでしょうか。
 同時に、当時のインドにおける国家群の弱肉強食的な闘争が、経典においては小鳥が虫をついばむ、という物語で象徴されているのですが、互いに殺し合わなければならない人間世界の矛盾が、この思いやり深い王子に、そのままの位につくことを許さなかったのではないでしょうか。
 このように、たった一つの原因ではなくして、さまざまな要素が重なり合って、ついに29歳の若き王子をして、城も国も家族をも、そして将来の地位も名誉をも捨てさせたのではないでしょうか。